「そうか? そんなことないと思うけどな」


 納得のいってない様子の花宮くんに、わたしは思わずムキになった。


「そんなことあります! 音楽の授業の歌唱テストのときなんか、わたし、声がふるえて、みんなに笑われたんですから!」

「はあ? そりゃ、笑ったやつらの耳が腐ってんだよ」

「え……?」


 花宮くん、すごいこと言ってるよ!


「あー、だから、おれが言いたいのはさ――」


 花宮くんは、もどかしそうに髪をくしゃっとして、

「おまえは、もっと自信もっていいんじゃね? ってこと!」

「あ、ありがとうございます……」

「そこで、本題なんだけど……」


 まだ本題じゃなかったんだ?

 花宮くんは立ちあがると、学ランのポケットから、折りたたまれた紙を取りだして、

「おれ、これに出ようと思ってる」


 紙を広げて、わたしに渡してきた。


「……?」


 ――第一回庄納市・中学生アピールコンテスト


 そう書かれたチラシには、カラフルなイラストや、説明書きもそえられている。


「アピール……コンテスト……?」

「ああ、出場者は持ち時間五分の間に、自分の思いを自由にアピールできるんだよ。スピーチしてもいいし、ダンスしてもいいし、漫才したっていい。もちろん歌ってもいい」

「はあ……」