「そ、それより! あのクスノキのことを話したいんでしょう?」


 あわてて話をそらすと、花宮くんは真面目な表情になって、

「ん? ああ、そうそう」


 右ひざをさすりながら話しはじめた。


「おれ、サッカー部なんだけど、このケガのせいで、しばらくは激しい運動は禁止で……。練習は出れないし、レギュラーになったばかりなのに秋季大会もパーだよ。やってらんねーって感じ」


 肩をすくめる花宮くん。


「――で、まっすぐ家に帰る気にもならねーし、久しぶりに大楠公園をブラブラしてみようかって……。あのクスノキのことが気になってたしさ」

「え……?」

「伐採しちまうんだってな」

「はい……。そうみたい……です……」


 こくり、とうなずくと、わたしの胸にやるせなさが広がっていった。

 花宮くんは空をあおぎ見て、ため息をつきながら、

「もったいねーよなー。庄納(しょうのう)市のシンボルみたいなもんじゃん? 何百年も前から、あそこにあるんだろ?」

「四百年以上です。ずっと、この街を見守ってきてくれたのに……」

「……あの歌、おまえが作ったの?」


 ふいにたずねられ、ドキリとした。


「え……?」


 花宮くんを見やると、彼はニコッとして。


「なんか、そんな気がしたんだけど……」


 もう、観念するしかない。