「早く行こうぜ。昼休み、終わっちまう」


 わたしの気も知らないで、花宮くんは、また階段を上りはじめた。

 そして、ドアを開けて、屋上へと出ていく花宮くん。


「おっ、だれもいねーじゃん。ラッキー♪」


 花宮くんは呑気(のんき)に口笛ふいてるけど、そりゃそうだよ。


「あの……ちょっと前から、屋上に出るのは禁止になったんですけど……」


 わたしはドアのところから、おそるおそる、指摘する。

 花宮くんは、こちらをふり返って、

「ああ、そうだっけ?」

 って、気にしてない様子。


「先生たちが禁止するのは、万が一、事故があったらヤバいからだろ? フェンスに近づかなきゃ、だいじょうぶだって」

「はあ……」


 わたしはしぶしぶ、屋上へと出た。

 生真面目に校則や決まりごとを守る性格なのに……。

 花宮くんは強引で、こっちのペースが乱されてしまう。


「よっと」


 細長いコンクリートブロックに腰かけた花宮くんは、わたしを手まねきした。


「こっち座れば?」

「いえ、立ったままでいいです……」


 わたしは、首を横にふった。


「なんだよ、さっきの気にしてんの?」

「ち、ちがいます!」


 花宮くんがニヤリとしたから、わたしは、ついムキになった。