階段から落ちちゃう!

 そう、覚悟したら。


「あぶねえ!」


 わたしの腕を、花宮くんがとっさにつかんで、自分のほうへと引き寄せた。


「わっぷ!」


 気がついたら、わたしは花宮くんに力強く抱きしめられ、その胸に顔をうずめていた。

 ど、ど、ど、どういう状況なの、これ――――っ!?


「だいじょうぶか?」

「……は、はい……」

「しっかりしてそうなのに、意外とそそっかしいんだな、おまえ」


 くくっと花宮くんが愉快そうに笑って、胸板がゆれた。

 学ランのボタンが、わたしの頬に当たって痛いけど、それどころじゃない。


「あ、あの……もう、だいじょうぶですから……」


 わたしは、なんとか声をしぼりだした。


「ん? ああ……」


 花宮くんの腕が離れて、身を引いたわたしは、胸をおさえた。

 階段から落ちそうになったからか、あるいは、花宮くんに抱きとめられたからか、心臓がバクバクしてるっ!


「あの……ありがとうございました」

「いや、びっくりさせんなよなー。……まっ、おかげで、右ひざの痛みが引いたけどな」


 ほほ笑む花宮くんに、またさらに心臓が早鐘(はやがね)を打つ。

 もう、心臓がもたないよっ!