仕方なしに、わたしは小走りで花宮くんのあとを追った。


「屋上に行こうぜ」


 花宮くんは、有無を言わせぬ調子で階段をのぼっていく。

 なんてマイペースなひとだろう!

 腹が立ってきたけれど、ちょっとこわいし、ついていくしかない。

 とりあえず、わたしの歌をからかうつもりはなさそうだし。


「……っつぅ…………」


 おもむろに立ち止まった花宮くんが、よろめいて手すりに手をかけた。

 えっ!? どうしたんだろう?

 花宮くんは腰を折って、もう片方の手で右ひざをおさえている。


「あの……どうしたんですか?」


 わたしは花宮くんの横に立って、顔をのぞきこんだ。

 眉間にしわを寄せながら、花宮くんが口を開く。


「部活で右ひざをケガしちゃってさ……」

「えっ、だいじょうぶなんですか!?」


 びっくりして、わたしにしては大きな声が出た。


「ああ、フツーに歩いてる分にはな。階段の上り下りのときだけ要注意なんだ。こうやって、痛みがくるときあるから……」

「――っ!」


 わたしのほうを向いた花宮くんと、わたしの鼻先が、あやうくふれそうになった。

 わわっ、どアップ!

 あわてて、身を引いたら。


「きゃっ……」


 階段でバランスをくずしてしまった。

 わたしは必死にもがいて、体勢を立て直そうとしたけれど。