ウソの魔法に、君とかかる (短)


「仲良く怒られに行くか」

「すごく目立ちそうだね……」



苦笑を浮かべる私が、黒瀬くんの後に続く。

だけど。教室を出ようとした、その時。



「あのさ」



クルッと。黒瀬くんが、私を振り返った。



「俺も……好き。雫のこと」

「え――?」



す、好き?

し……雫? 名前⁉


いきなりの名前呼びに、カクッと足の力が抜け、床に座り込む。

黒瀬くんは「おゎ!?」とビックリしたけど……



「何やってんだよ、雫」って。



私の大好きな笑顔を浮かべながら、手を伸ばしてくれた。



「……っ」



まさか「名前で呼んでくれた事に感動して腰をぬかした」とは言えないから。

目を泳がせながら、ちょっとだけはぐらかす。



「朝、パン一口だけだったから……お腹が空いて」

「……力が入らない?」

「う、うん……」

「……ぶは」



上手くごまかせた、と思ったけど、実際はそんなことなく。

黒瀬くんは吹き出して、爆笑した。

座る私の前に腰を下ろし、涙が出るほど笑ってる。


そして――



「やっぱ雫といると、飽きないな」



満面の笑みで、いつか言った時と同じセリフを言ったのだった。