ウソの魔法に、君とかかる (短)


「私は、確かに……黒瀬くんと彼氏彼女のフリをした。ウソの魔法をかけたよ。

でも……ウソでも、幸せだった。黒瀬くんと一緒にいられて、嬉しかったっ」



気付けば、私の目からポタポタと、涙が流れていた。

そんな私を見て、黒瀬くんが「暮石」と呟く。その声は、黒瀬くんの近くの席にいた、花崎くんだけが聞こえていた。



「黒瀬くん……」



私たちってウソの関係だけど。

でも、これから私が口にする言葉は、全て本当なんだよ。

あなたとかけたウソの魔法のおかげで、

私は前より、


もっと幸せになったの――



「ありがとう、黒瀬くん。

大好きだよ……っ」

「!」



ガタッ



反応したのは……黒瀬くんだった。

今まで座っていた椅子を、立ち上がった拍子に倒してしまうほど。勢いよく、立ちあがった。

だけど黒瀬くんは、私を見るではなく……。自分の席の近くにいる、花崎くんを見た。


そして――



「お前、いいわけ? 女の子に、あそこまで言わせて」

「え……」

「男なら、自分を好きになってくれた子くらい守ったら?

お前が暮石を傷つけたことはあっても、暮石がお前を傷つけたことなかったろ? すごい女の子だよ、暮石は。

お前は? いつまでカッコ悪い所みせてんだよ。男なら、ここぞって時に腹くくれ」

「……っ!」