ウソの魔法に、君とかかる (短)


名前を呼ばれて私を見た黒瀬くんは、冷たい目をしていて……。

私を励ましてくれた黒瀬くんの面影は、まったくなかった。

そうだ、黒瀬くんは、もともと怖い人だって。近寄りがたい人だって。私、今までそう思ってたじゃない。


でも、だけど……!



――俺は、好きだけど

――暮石の…………長い髪



少し照れた顔とか。
ふざけてる顔とか。
冗談で怒ってる顔とか。
励ましてくれる真剣な顔とか……。


私は、黒瀬くんの色んな顔を、もう知ってる。ただの怖い人じゃないって、もう分かってる。

だから黒瀬くん、教えてよ。

あなたが今、なにを考えているのか。


私にちゃんと、教えてよ――



「黒瀬くん!」

「……」



とんっ


黒瀬くんは私に無言で近づき、軽く握ったこぶしで、私の腕にふれた。

そして、私の耳元で――



「もう泣くなよ。がんばれ」

「っ!」



それだけ言って、すぐに離れた。

ニッと、優しい笑みを浮かべながら。