あの後――


泣く私のカバンを持ってくれた黒瀬くんは、私と一緒に学校を出た。



「おい黒瀬ー! なんだよ、やっぱりお前ら付き合って、」

「ちょっと黒瀬くん! 本当なの!?」

「やだ~、黒瀬くん彼女もちだったのー!」



なんて。

そんな声があちらこちらから聞こえた。

だけど――


黒瀬くんは、私と繋いだ手を、ほどかなかった。


そして学校を出て少し歩いた今も、離すことなくギュッと握っている。



「あ、あの……黒瀬、くんっ」

「ん?」



”ん?”と。

まるで、今までの事を全て忘れたみたいに。黒瀬くんは、少し笑って私を見た。


五月。
すでに夏の暑さを覚える、この季節――


だけど黒瀬くんは、汗ばむこともなく、爽やかなもので……。



「ご、ごめんなさい……っ」



涙と汗でグシャグシャになった私とは、大違い。