「……叶愛、ただいま」 廊下に電気はついてるけど返事がない。 背中に妙な汗が伝う。 どこからかまろんが走ってきた。 何度も鳴きながら俺を必死に見上げてくる。 脱衣所も風呂場もリビングも暗い。 明かりが漏れているのはダイニングから。 ゆっくり扉を開けた直後 ――心臓が止まりかけた。 仰向けにだらりと横たわる白い体を見て、さっと血の気が引く。 「――叶愛、」 ひどく掠れた声が自分のものだとわかるまで、しばらくかかった。