「数学担当の田中と言います。お母様、悠花さんはいつも熱心に勉強頑張られてますし、塾の授業も1度もサボったりしたことはないですよ。それに成績も本当に優秀で私達教師陣も感心している次第です。まぁ、今日は自習ですし、退席することを教師に伝えていなかった悠花さんにも非はありますが、そこまで怒鳴らないであげてください」

母をなだめつつ、「たまには息抜きも必要ですよ」と、フォローをしてくれる田中先生に私は目頭が熱くなる。

「田中先生、お世話になっております。ですが、今は親子同士の話ですので、先生は口を挟まないでもらいたいです。うちの教育方針の問題ですので」

しかし、当の母には田中先生のフォローは届かなかった。

冷たく突き放すような母の物言いに私は、とうとう我慢できなくなる。

そしてついに。

「医者になるって、それはお母さんの夢じゃないの?私は…医者になりたいなんてこれぽっちも思ってないもん!昔から勉強して良い大学に入って立派な医者になるって言われ続けてきたけど、それは私の夢じゃないわ!」

吐き捨てるように、そう言い放った。