「でもその点、悠花は勉強しっかり頑張ってるし、お母さんも安心だわ」
「う…ん。勉強はちゃんとしてるよ」
「次のテストも1位とれるように頑張るのよ?それで、何か言いかけてたわよね?どうかしたの?」
ニコニコと機嫌の良い母は、お皿に今日の夕食を盛り付けながら私に尋ねてくる。
"部活にかまけて勉強を疎かにするから"
そんなことを言われた手前、今更「部活に入りたい」なんて口が裂けても言えない雰囲気で…。
「あ、土曜日の塾の自習なんだけど早めに出ようかなと思って!それで、お昼は近くのファミレスとかで食べるからお弁当は大丈夫っていうことを言いたくて…」
頭をフル回転させて、それっぽい言い訳とミーティングに参加できるよう土曜日のお弁当がいらないことを母に伝えた。
「あらそう?そうね。たまには気分転換にお昼くらい好きなもの食べたいわよね〜。わかったわ。じゃあ、これ土曜日のお昼ご飯代ね!好きなの食べなさい」
「ありがとう…」
母は、財布から千円札を取り出すと笑顔で私に手渡し「ほら、もう夕食できるから荷物置いていらっしゃい」と、言葉を紡ぐ。
私は素直にコクリと頷き、足早に自室へと向かう階段をのぼった。
入部届けは先生に少し待ってもらおう。
それで土曜日は塾の自習室をこっそり抜け出して、ミーティングに参加すればいいよね…?
もちろん、お母さんに内緒でミーティングに参加することは、良くないことだってわかってはいるけれど、話をするにもタイミングが大事だもん。
私は小さくため息をこぼすと、自室のドアを開けたのだったーー…。