秋を飛ばして唐突にやって来た、冬。
かなり早い時間から暮れていく夕陽に、私は一つ溜息を吐く。



そんな小さな動作にも、目の前の人物はゆらり、と瞳を揺らしてから、不安げに眉を下げた。

私は真っ直ぐに、その人物を見てから…もう一度今度は喉の奥から深く深く息を吐き出す。


「で、今更何…?」


腕を胸の前でキツく組み、あからさまな拒絶の態勢を作った私から出た言葉は、とても冷え切っていた。

そう、さっきからこの頬を切るような、氷よりも冷たい風のように…。


目の前の人物…佐々木和哉は、眉を下げたまま少しだけ俯き加減で、ポツリと言葉を零す。



「…今までの事、全部俺が悪いって思ってる…」


震える声は、縋る声。
それでも、私は突き放す。


「そう。だからって、いいのよ?わざわざ連絡なんてして来なくっても…。どうせ別れるつもりなんだし」


私の言葉は刺々しく、じわりじわりと真綿で首を絞めるように、相手の逃げ場を封じ込めていく。
それくらい、腹が立って…いや…寧ろ虚しさ色に染まっていた。


「麻也……俺は、」



その先を続けようとする、彼の言葉を遮るようにして私は吐き捨てるように呟く。
今度は…自身を抱き締めるようにして、それでも拒絶の態勢は崩さずに。



「いいのよ。私は。もう…疲れた。全てに。貴方にも」



そう、淡々と言葉の数珠を繋いでいくと、今にも泣き出しそうな彼の歪んだ顔が視界に入る。


舌打ちしたい気分だ…。
まるで、私が悪い毒女なったような錯覚を与える、彼に対して。
そして、彼が零した言葉にも、だ。
だから、私は面倒臭くなって重くなってしまった口をなんとか開き、彼を諭す。

諭す…?
そんな場合でも、問題でもない。
大体、そんな資格は彼には…もう無い筈。
それでも、彼へと言葉を掛けるのは、最後の優しさからかもしれない。


「…約束を最初に破ったのは、貴方。それを甘受してしまったのは、私。何方にも非があるもの…。今更縋れるわけがない。そうでしょう?」


なるべく、平静に。
ここで感情的になってしまう事は得策ではない。

私はそう判断した。