「わんこ、ちゃんと手は洗ったの?」


「洗いましたっ」


「ちょっと千明、好き嫌いせず野菜もちゃんと焼きなよ。胃もたれして仕方ないって」


「……野菜とか食いモンじゃねーよ」


「それに猿、今日くらいネイルやめてって言ったよね?猫は遠慮せずもっと食べな」


「やぁ~ん!ネイルはアタシのカラダの一部なのーっ!」


「……俺、基本ベジタリアンだから」



炎天下の下。

集った色とりどりの若者たちが騒ぐ、広々としたバーベキュー場。


ジュウジュウとお肉の焼ける音。

もくもくと昇ってゆく煙。



「あとお前たち、女の子ナンパするの禁止ね。同行してる僕が恥ずかしいから」


「「「えええ~~~!!!」」」


「あーっ!千明!それけっこう分厚くて歯ごたえあるから、わんこにあげるなら小さくカットしてからあげてよ!」


「………教育係の仕事しすぎだろ」



お母さんだ………。

どっからどう見てもお母さんだ…。


沙蘭くんのそんな新しい一面を知った、夏休み真っ只中のこと。