縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~

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本殿の中は真っ暗だったが、外から村人たちの願掛けする声や足音が聞こえている間は寂しくはなかった。
これは◯◯ちゃんの声。

こっちは××さんところの長男の声。
声だけで誰だかはっきりと顔が浮かんでくる。

みんな熱心に願掛けをしているので、その間薫子も正座を崩すことはなかった。
ちょうど薫子の後ろにご神体となる石ででてきた剣が置かれているのだけれど、今だけは自分がご神体になったような気分だった。

しかし、やがて声は1人分、2人分と少なくなってくる。
足音が聞こえて遠ざかっていく。

人の気配が消えて太陽も傾いてきているようで、本殿の中が肌寒く感じられはじめた。
「菊乃、行くよ」