言われた意味がわからずに、その場に立ち尽くす。
 そのとき、鼻をすするような音が聞こえて、気配のするほうへと目をやった。
 柱の陰に隠れるように、蒼白な顔をしたサリーが立っている。その目は泣いたあとのように赤く、片方の頬を腫らしていた。もしや誰かに叩かれたのだろうか。

(サリー……まさか私のせいで責められたの……?)

 勝ち誇った顔をしたブルーネルが、令嬢たちのあとを追って去っていった。

 集団が消えてからも、サリーがこちらに近づいてくる様子はなかった。上からなにか言い含められているのだろう。
 彼女は沈痛な面持ちでそっと頭を下げると、廊下の奥へと消えていった。

 専属侍女を取り上げられてしまったことよりも、サリー自身の状況が気がかりで、胸が痛んだ。
 けれども距離を置くことが彼女の身の安全に繋がるのであれば、黙って見送るしかなかった。