「俺警戒されてんの!? なんもしねえよ!?」

「お前舞弥のこと好きだろ」

「きゃーっ」

今度は耳をふさぐ玉。

「そこで奇声あげるなよ……」

壱がため息とともに言えば、うす暗いので舞弥にはわからないが玉は顔を真っ赤にさせていた。

「だ、だって、そんなこと言っても壱に対してとおんなじ感じで大事なだけだかんな! 変な勘違いで俺の事焼くなよ!?」

「焼かないよ」

「もういやじゃー! 壱のやつ舞弥のことで独占欲強すぎなんじゃー!」

「へえ、こういうのを独占欲っていうのか……」

「い、壱? なんかヘンな知識得てない……?」

不穏なつぶやきをする壱に、肩を抱かれている舞弥は引きつった声をあげた。

壱は恋愛感情を持ったことはなくても周りに女性がいたということは聞いている。

そもそも人間とあやかしでは恋愛に対してのさまざまなところで違いがあるのかも疑問点だった。

階段を上り切ったあたりで、ムンクの叫びのような顔になっている玉を背後に壱は爽やかな笑顔を舞弥に見せる。

「何も心配いらない。俺の生涯の愛情は舞弥のものだから。――聞き分けろよ、化け猫」

――一迅の風が吹き抜けた。

思わず腕で目をかばった舞弥が次に見たのは、神社の本殿の前に体の前で手を揃えて立っている眼鏡の女性だった。

「―――」

暗闇のせいで表情まではわからないけれど、玉が手にする懐中電灯がその姿を照らす。

左側にまとめられた髪はゆるい三つ編みで、かけているのは丸い眼鏡。

丈の長いスカートと薄手のカーディガンを羽織った姿は人間のそれだった。

なんで、と思う舞弥。

彼女は舞弥たちの後ろをついてきていたはず。

カフェを出たとき、舞弥は一度その姿が後ろにいるのを確かに見ていた。

「……その方を、選ばれたのですか」

感情の読めない声音が、女性から聞こえた。

壱は一層強く舞弥を引き寄せる。