真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「ところで、メルバーン卿はそれほど油を売っていられないのでは? お時間はよろしいのですか」


明らかな仕事道具を片手にうろついているとなると、何か作業があるはず。話してばかりで邪魔をしてはいけない。


大きな手元を見遣ると、メルバーン卿は首を振った。


「いや、それが、そろそろ休憩時間でね。仕事に区切りがついたんだが、昼時の店はどこも混むものだから、昼食を遅くしようかどうしようかと悩んでいたところなんだ」


話し相手になってくれてちょうどありがたかった、と続いては、お誘いしないわけにはいかないわ。


「わたしもそろそろ休憩しようかと思っていたところです。もしよろしければ、わたしの執務室にいらっしゃいますか」


ぱちり、とヘイゼルが瞬く。


「それはありがたいが……」

「軽いものでもよろしければ、お食事がてら、話し相手になりますわ。新しい執務室や、陛下からいただいた便箋をお見せしたいです」


もちろん静かですよ。


いかがかしら、と微笑んでみせると、メルバーン卿もうつくしく微笑み返した。


「ありがとう。では、お言葉に甘えてお邪魔しても?」

「ええ、どうぞ。何もないところですが、歓迎いたします」