真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「ああ、薔薇(プリムローズ)卿の方がよいだろうか。それとも、書簡卿とお呼びした方がよろしいかな?」


何気ない呼び名は、おそらくただのからかいだった。けれど、不慣れなわたしを身構えさせるには充分だった。


わたしは女王の書簡係として叙爵されたので、女王の真珠、女王の薔薇に加えて、書簡卿などという呼び名が付いてしまったのである。


薔薇の方がまだしもいいわ。名字を呼ばれているのか役職を呼ばれているのか分からなくて、返事がしやすいもの。

呼び名に合わせて対応するのは、不慣れなわたしにはいささか難しすぎる。


「……お戯れを。名高いメルバーン公爵家のご子息からそう呼ばれたとあっては、緊張のあまりわたくしの身がもちませんわ」


ひとまず、呼ばれた爵位に合わせて一人称をわたくしとすると、メルバーン卿が瞬きをした。


ただのからかいに向けるには、わたしはよほど渋い顔をしていたらしい。


同じ貴族になったとはいえ、一代限りのわたしと、何代も続くメルバーン卿とでは、大きな隔たりがある。

口調は変えられないし、変えたくないし、爵位を持ち出してからかわれるには不慣れでつらい。


つらつら棒読みすると、ジト目を向けられたヘイゼルがすいと横にそれ、メルバーン卿がもぞりと口を結んだ。