真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

数日後、令名の高い方が先生に選ばれ、わたしは望み通り、勉強時間が増えた。


こちらにいろいろと話した後、「どう思われますか」と必ず確認してくださる、とても感じのよい方。

こちらがなにを答えてもまずは頷き、根拠になる資料を提示しながら、あくまで持論として話を展開する。


講義の内容は、隣国の文化、特に言葉や物語に焦点を置いてもらい、参考になりそうなことはひたすら書き留めている。


自己流の訳では限界があったけれど、辞書を引き引き教えてもらうと、なるほどという言い回しがあちらこちらにあって、学びが身になっていくのを感じる。


贅の限りを尽くした教育のおこぼれは、確実にわたしを磨いてくれた。


書庫から資料を取り出して運ぶ途中、休憩室に向かうらしい文官たちとすれ違った。


「薔薇のきみ、ご機嫌よう」


立ち止まって丁寧に会釈してくれたので、こちらも立ち止まってカーテシーをする。


「ご機嫌よう、皆さま方」


背の高い男性陣の中にあってなお、すらりとしたメルバーン卿が、ご機嫌よう、だけ重ねた。ジュディス文官とは、ここでは呼べないものね。


「書簡の資料ですか? 薔薇のきみは仕事熱心でいらっしゃる」


運ぶお手伝いでも、と短く髪を刈った男性が声をかけてくれたけれど、にっこり微笑んでおく。


「ありがとう存じます。ですが、皆さまは休憩中のご様子。お気持ちだけで充分ですわ。それほど重くありませんので、どうぞお構いなく」

「それならよかったです。お気をつけて」

「ありがとう存じます」


一礼して少し離れたところで、閉まりかけた休憩室の扉の隙間から、「薔薇のきみって明らかに賢そうだよな」とひそめたらしい低い声が聞こえて思わず立ち止まった。