女王はせっせと毎夜手紙を書き、王配と書簡を交わしている。


それを一部例にとりながら、ご婦人のための、女性による女性のための書簡文集を発刊する運びとなった。


女王を見習って、自分も愛する人や恋人に書簡を書きたいと思う女性が増えたからだ。


物事に合わせて書けるように詳しく分類し、うつくしい飾り枠、きれいな文章、選んだ紙や添えたものを細やかに記してある。


貴族女性が楽しめるように、インクや紙を選ぶときの配慮や、ペン先の扱いにも触れた。


また、貴族でない女性が楽しめるように、我が国にある花や葉を多く取り入れ、身近なものを題材とした。


内容は、そのまま真似しても、反対に少し変えても不自然にならないよう、詳しい例とおおよその方向性を示してある。


「この文集を取りまとめるなら、筆跡はあなたのものがふさわしいわ」と女王に言われて、すべてわたしが書いた。


手に取りやすいよう、価格を抑えるために皮張りは避け、箱に入れる装丁に。その方が重くないから使いやすい。


「真珠の首飾り、あるいは淑やかな薔薇の覚え書き」。


書棚の隅や淑女の私室の一角に置いても見劣りしない、うつくしい本である。


真珠の首飾りも薔薇も、淑女を指す。

首飾りをつけるのも、薔薇のような頬をよしとされるのも、淑女のみ。男性は該当しない。


そして、これは同時にわたしの代名詞でもある。


女王のおかげで、真珠の首飾り、揃いの真珠の耳飾り、金の薔薇のブローチ、薔薇のシニヨンと、真珠と薔薇はわたしに関連が深い。


つまり、淑女のための本で、わたしが関わっている本だと、題名から分かるようになっている。