真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「ああ、ええと、言葉が崩れるのもよくない、……よく、ありませんでしたね。たいへんな失礼を」

「いえ、あの、丁寧に謝られるともっと怖いのでそのままでお願いします」


怖がらせるつもりがなかったということは、崩れた口調は親しみがこもっているということ。

そうと分かれば、丁寧にされると逆に、上流階級と中流階級という立場を意識してしまう。


「そのままでいいのか?」

「そのままでいいです」

「では、そうしよう。きみもよければそのま」

「わたしは結構です!」


力強く遮っておく。言葉を崩す気はありません。


「話を戻すと、きみとはずっと、話してみたいと思っていたんだ」

「そう、ですか」

「そうだよ。時間を見つけては話しかけに行っただろう。薔薇のきみと呼んだせいで、嫌がられてしまったが」


そうだったの。……そうだったの?


あのときはしつこいひとだと思った。今は、よく分からないひとだと思っている。


「そういうわけなんだ。言い訳をさせてほしい」


あまりに真摯な様子で、あまりに直接的なことを言うものだから、思わず吹き出すと、メルバーン卿も少し笑った。