真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「わたし、わたしは、陛下の薔薇です。薔薇なのです……」


震える声を押さえつけ、頑なに言い募る。


じっと視線を向けられているのに気づいていながら、そちらを見ないようにした。


わたしは哀れな娘ではないと、仕事をしているだけだと言い聞かせないと、ほんとうに泣いてしまいそうだった。


『わたくしの薔薇と、呼ばせてくれるわね?』


わたしの文章を言祝いでくれたのは、女王陛下ただおひとり。


わたしは、ふしだらなつもりで書いたのではない。

懸命に言葉を選んだことが、曲解されて色恋に繋がるのは、ひどく悲しく思われた。


「……ジュディス文官」

「なん、でしょう」


戻った呼び名に少し喉がゆるむ。いまだ涙ににじんだ視界を向けて、思わず固まった。


「きみを、怖がらせると思わなかった。申し訳なかった」


にじみすぎてよく見えないとか、何かの間違いだとかでなければ、こわごわ見上げた先で、メルバーン卿が頭を下げている。


「結果的に、そうなったが。私は、きみを傷つけたくて申し出たんじゃあ、ないんだ」

「ええと」


メルバーン卿がちらりと顔を上げる。ヘイゼルの目は、もう凪いでいる。


「きみの筆跡が、あまりにうつくしくて、驚いて」


節の高い指が、ごわつく紙を撫ぜた。