真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

こちらの悪あがきをさらりと流して、その声ゆえに落ち着いた様子のまま、言い募る。


「ジュディス。きみの手紙が欲しい」


崩れた言葉に泣きそうだった。


決して、ときめきなどにではない。

こんなにひどい言い草が、側から聞いただけではあくまでメルバーン卿の熱烈な告白のように聞こえなくもない、わたしの立場の低さを思い知らされて、だ。


呼び捨てにされ、丁寧な言葉を捨てられ、文官という対等な建前も外され、それでも、これは脅しになってくれない。


貞淑たれ、と常識が叫んでいる。賢しらに反論してはいけないと、世間体が騒ぎ立てている。


わたしは、あの家から、抑圧的なひとから、離れたはずなのに。女王陛下が救い出してくれたのに。


……そう。そうよ。わたしは陛下の薔薇(プリムローズ)。いいように使われてなるものですか。


張りついた唇を、無理矢理開く。


「……どうぞ、役職でお呼びください、メルバーン卿。先ほどは、ジュディス文官と、お呼びくださったではありませんか」

「ジュディス。ウィリアムと」


言い含めるように名前を呼ぶものだから、余計に泣きそうだった。


まるで優しく教えるような、柔らかく訂正するような声音。

ついさっきまで、わたしたちの立場は対等なはずだったのに、今はもう、完全に明確な差がある。


やめて。そんなふうに呼ばないでよ。わたしがわがままを言っているとでも言うの。