真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「知っていますとも。そのうえで、あなたの文章に感銘を受けたと言っているんです」


なに。なんなの。

なぜ、このひとは、こんな目をしている。

なぜ、こんなに言葉を尽くしている。


ちらりと盗み見た先、扉は変わらず少し開いていた。


「私は欲張りではありませんが」

「……そう(うそぶ)くひとの、どこが欲張りではないのです」


滑り込ませた軽口は意味をなさなかった。メルバーン卿は厳かに続けた。


「あなたの手紙が欲しいと思いました」


きつく、唇を噛んだ。


「陛下にふさわしく選ばれた言葉ではなく、覚え書きのための紙でもなく」

「……メルバーン卿」

「あなたの筆跡で、あなたの言葉で、それにふさわしい紙とインクと装飾をもって、愛を乞われたらどんなふうだろうと、思いました」

「メルバーン卿。仕事のご依頼でしたら、お代と期限を決めましょう」

「仕事を依頼したのではないことくらい、あなたなら、分かってくださるでしょう?」


分かっている。分かっているからわざと言ったのだ。


「……わたしには、夫がおります」


これは、そういう誘いだった。


夫に見初められたときを思い返す。


夫はこのひとと同じ熱のこもった目をして、わたしを呼んだ。

そうしてわたしの家に通ううち、わたしの指に指輪を与え、カイムという姓を共有し、部屋を共にした。


わたしの手紙は、今回も、情を買ってしまったのだと思った。


わたしはこのうつくしい男の、琴線に触れたらしい。