真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

ぴたりと角が重なるほどきれいな紙は、たいへんな値段になってしまう。

それではもったいなくて覚え書きを書き留められないので、角がぼろぼろだとか、厚さが一定でないだとか、色がくすんでいるだとか、あまり高級でない紙をお願いしている。

そのせいで、小さな机の上で紙が層を作って重なり合い、少しがさついて幅をとっている。


「これは……」

「陛下のお言葉としてふさわしいと思われる言葉の覚え書きと、美文と名高い本の写しです」


中身が少し見えてしまったのか言い淀んだメルバーン卿に、あくまで淡々と伝える。


わたしの仕事は、私信に使える文を磨くこと。

わたしの言葉なのか、仕事の覚え書きなのか、一見すると分かりにくくて、判断がつかなかったんでしょうね。


私信めいた文章が並んでいるけれど、ただの仕事の覚え書きだから、気にしないでほしい。


「仕事熱心なことですね。拝見しても?」

「どうぞ」


紙の向きを揃えて取り上げる。差し出した文の上をするりと滑った目が、細くなった。


「これは、隣国の……あなたは、翻訳もできるのですか?」


一瞥しただけで読めるメルバーン卿は、さすがの教養深さ。文章を読み書きするのに慣れたひとの速さだった。


「話せる者は多うございますよ」

「書ける者は多くないでしょう」

「陛下は外国人も重用なさっています。わたしも読み書きができた方が、陛下の姿勢にふさわしい言葉を選べるかと思いましたので」


そっとめくった下の紙には、愛の言葉がつらつらと並んでいる。


メルバーン卿のうつくしいヘイゼルが、今度は皿のようになった。


「似合いませんか?」

「……いえ。それがあなたの仕事でしょう」


小さく息を吐き出して落ち着けてから、具体的なコメントを避けたのは、賢明な判断だと思う。