真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

紙も窓ガラスも、インクでさえ高級品である。


そして書き物は女性にとって、褒められた行為ではない。


わたしよりも苦しい状況にあえいでいる女性は、大勢いる。


口頭では言葉が変わってしまう。記録も思い出も、正しく残せない。


紙でなければいけない。

けれども、その手段がない。場所も時間もない。


日々の糊口をしのごうという最中、書き物をし、文字を覚えようなどという人々は、多くない。


「そのような環境において、人々が、ましてや女性が力を蓄えることは、非常に難しいと思います」


しかしそれは、環境さえ変われば、より目覚ましい進歩を遂げる可能性があるということだ。


「わたしは仕事に恵まれ、環境に恵まれて、陛下に見出されました」


あなたは先ほど、わたしを一般的と仰った。


「わたしが今こうしてこの場にいることが特別でないのなら、一般的な多くの女性が、少しでも変われることを願っています」


わたしはあの家が、好きではなかった。


でも、文字を書いたときの紙のにじみや、少し毛羽だった紙の端が、ふわふわと陽の光に明るく透けるのが好きだった。