真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

個人的な話になることを前置いて謝り、紅茶をひとくち口に含む。


この部屋に置いておける紅茶、つまりわたしが淹れられる紅茶は、最低限のものだ。


女王の執務室でいただくものとは違う、渋みと濃い赤。お茶請けなんて洒落たものはないから、味が直接分かってしまう。ミルクなしには飲めない。


上品な紅茶は薄いきれいな赤をしているのだと、貴族の方にお仕えし始めてから知った。


「わたしの夫は、節制を心掛けるひとです」


ゆっくり言葉を選びながら、言いたいことをひとつずつ手繰り寄せる。


メルバーン卿は当然ながら男性である。


男性を貶めるような言い方は避けるべきだ。


一般的に考えられているように、女性が家庭を放り出して働くことを、よくは思っていないかもしれない。


「わたしは、以前お仕えした夫人の手伝いを認められ、こちらにまいりました」

「そう聞いています。陛下が私信をお読みになり、そのうつくしさに心打たれたとか」


はい、と頷く。


「そのお手伝いは、夫には仕事として受け取られませんでした」

「仕事には違いないと思いますが……」

「いいえ。紙とペン、インクはお屋敷から支給していただきましたが、あくまでお手伝いを申し出たのはわたしです」


そういうことになっている。何かあったらわたしのお節介のせいになるのを、わたし自身が望んだ。


夫人はとてもよい方だった。


ただの使用人に教養をと考える先進的な女性にふさわしく、「あなたの努力に汚名で報いるわけにはいかないわ」と遠慮してくださったけれど、わたしが強硬にお願いした。