真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「ジュディス、次の休みはいつ取れそうかな」


本来、わたしの仕事に休みはない。今夜だけが例外で、陛下は毎夜、王配殿下を思って手紙を書く。


「明るいうちでしたら、陛下にお願いすればいつでも……明日にでもお願いしてみましょうか」

「できるだけ、早い方が嬉しい」

「わかりました。そのようにお伝えしますね」

「ありがとう」


一度言葉を選び直したウィルが、ゆっくり口を開いた。


「休みが取れたら、薄茶のドレスをあつらえに行こう」

「っ」


思わずドレスの裾を握る。このドレスは青と白。次のドレスはウィルの色。

ウィルはいつも、わたしを勇気づけてくれる。


「すごく嬉しい。ウィル、あなたの行動が早いところ、ほんとうに好きよ」

「それはよかった。これでようやく、いつでもきみを褒められるな」


あの紺のドレス以外は全部褒めていたら、大変なことになるわ。


「お休みが決まったら、お手紙でお知らせしますか?」

「いや、夜には会えるんだろう? そこで教えてほしい。明日からもいつも通り、仕事終わりに迎えに行く」

「わかりました」


早く薄茶のドレスが欲しかった。

早くウィルと結婚したいと思った。

まだうっすらと残る指輪焼けに、ウィルからもらった指輪を重ねたかった。


ウィルの色を身にまとい、あのわたしだけの執務室で、依頼にふさわしく、うつくしいインクを選んだなら、どんなにかすばらしいだろう。


節の高い大きな手を、両手で包む。微笑んだウィルが、空いている片手でわたしの両手を握った。


穏やかな心音と、不定期な車輪の音が聞こえる。


ウィルは馬車が停まるまで、微笑んで黙ったままだった。