真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「明日は執務室まで送るよ」

「ありがとう。じゃあ、もう少し早く出ましょう。ウィルが遅れたら大変だわ」

「そうだね。朝食はなにがいい? 料理長に頼んでおく」

「公爵家のお食事はどれも美味しいから、なんでもいいわ。アレクサンドラさまは、いつも朝食をご一緒なさるの?」

「時間が合えば、かな。母はゆっくり起きる方なんだ。でも、きみと話せるとなったら早起きするかもしれない。帰ったら聞いてみようか」

「ありがとう。そうしたら、いつもみなさんがとっているものと同じ朝食をいただいてみたいわ」


ウィルがくすりと笑った。手間を増やさないように、という考えが透けていたらしい。


「わたしが食べてみたいからよ」

「ああ。ありがとう」


……うーん。本当のことなのに、半分くらいしか信じてもらえていない。美味しい朝食に決まっているので、いいのだけれど。


送迎は公爵家の四頭立て馬車で、あんまり立派なので、乗り込むのに少し緊張する。ちょっとした用事のときは、四頭なんてつかない。


柔らかなクッションの効いた馬車の中、がたごとと揺られながら、向かいのうつくしいひとを見つめた。


……大事にされているなあ、と思う。


勅許のドレス。うつくしい装いと準備。二度ダンスに誘ってくれたこと。立派な馬車での送迎。朝食を一緒に食べること。


ヘイゼルの、甘く解ける眼差し。


『私は、きみに不自由をさせない。衣食住はもちろん、紙も、ペンも、インクも、きみだけの部屋も』


このひとの長所は、枚挙にいとまがない。