真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「ジュディス、まだなにか、したい仕事があるだろうか。このまま抜けられる?」

「ええ、すっかり大役を果たし終えたつもりよ」

「お疲れさま」

「ずっと付き合わせてしまってごめんなさい。おかげさまでなんとかなりました」

「いや、勉強になったよ。国外の方とお会いする機会は貴重だから」


公爵子息として、ウィルはおそらく、周辺諸国や関係を持ちそうな国々について一通り頭に入れている。

お名前、国の歴史、国花、特徴、特産品、可能であれば言語と音楽。


わたしが聞き取れないような、その国独自のお名前や発音も多かったのだけれど、ウィルは分かっていそうな頷き方をしていた。

相槌の頷きというよりは、頭の中の知識と、今聞いた名前や言葉が結びついたような、納得を伴う頷き。


それはもちろん、ウィルのこれまでの努力と能力に担保されている。こういう高位貴族らしさを目の当たりにするにつけ、翻って、ウィルの根の善良さを思う。


……得がたいひとだわ。


少し前、ウィルは『本日はわが公爵家より参りましたので、帰りもそのつもりでおりました』と答えていた。だから、明日、一緒に来ることになるのだと、思う。


「ね、ウィル。送ってくださるんでしょう?」


ありがとう、に続けてそうっと見上げると、ウィルが腰を抱いた。


「もちろんだとも。帰ろう、ジュディス」

「ええ、帰りましょうか」