真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

書簡卿はもうこの国の高位貴族と婚約していて、近々婚姻する。

婚約者はかの次期メルバーン公爵で、仲が良さそうだ。

幸せに暮らしているところを引き裂くのはよくない――という世論を立てておく。


わたしは今後もこの国で暮らすと決まっている、という牽制が必要なんでしょう。


わたしの気が回らなくて、ウィルとの関係を陛下にご報告するのが遅れてしまった。

それを、ウィルのさりげなさと陛下の機転によって、そっとフォローしてもらったんだわ。


これで、諸々を画策するひとにも、ウィルの容姿と身分は伝わるでしょう。わたしが婚約者と仲睦まじい様子であることも。


一夫一妻の国王陛下ご夫妻が治める国でよかった。なにかあっても、婚約を口実に断れる。

婚約者と仲睦まじいことが抑止力にならない相手には、わたしも陛下のような夫婦像に憧れていてと言えば、だいぶ効く。

それがだめでも、陛下がわたしの婚姻にご助力なさる口実ができる。


ほう、と静かに息を吐く。


陛下のおそばで、わたしの好きなひとと一緒に、わたしが望んだ仕事ができる。その、幸いよ。


王城には夢がある。けれどそれは、わたしの場合、国外の貴族に見初められる、という幸せの掴み方ではいけないのである。