定刻になると、陛下はこの国の色をまとい、王配殿下にエスコートされて階段を下りていらした。盛大な拍手でお迎えする。


まずは、陛下の演奏から。陛下はフルートがお得意なので、生誕祭では、王立管弦楽団とともに一曲披露なさるのが通例になっている。


続いてダンス。拍手の隙間を縫うようにバイオリンが鳴り、ゆったりしたワルツが奏でられる。

一曲目は国王夫妻に贈られる。王城での宴や陛下が招かれた宴の場合、必ず、ダンスは陛下のお好きな曲で始まる。


王配殿下と二人で踊った後、国王夫妻にはこれまた大きな拍手が贈られた。ここからは、国王夫妻はご着席され、会場の人々が踊ることになる。


拍手をやめ、緩やかに間をもたせる音色を聞いていると、ウィルが片膝をついていた。


「ジュディス。今宵、あなたと踊る栄誉をいただきたい」

「もちろんです」

「ありがとう。お手をどうぞ」


練習通りに踊れて、胸を撫で下ろす。足を踏まなくてよかった、と離れようとしたものの。


「ウィル?」


曲が終わっても、ウィルは手を離さなかった。


一曲目は、エスコートしてもらった相手と踊るのが普通だから、もちろん誘ってくれるのはわかっていたわ。二人で練習もしたもの。


二回目になるわ、と訝しむわたしに、ウィルは落ち着いて「婚約者だからね」と返事をした。


確かに以前、ダンスの相手を二度お願いできるか聞いたけれど、あれは冗談で。

婚約者とは続けて二度踊っていい、というだけで、二度踊ると定められているわけではない。

だから、二度踊ることもあれば、一度だけのこともある。何度踊るかは、二人の意思による。


ええと、その、これはその、わたしたちは婚約していますと喧伝して回るのと同義なのだけれど……!