真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「気にしないとは言わない。でも、きみはドレスを贈らせてくれた。わが家に挨拶にも来てくれた。きみがどこで仕事をしようとしまいと、私の婚約者であることには変わりがない」


優しく理性的な返答だった。


ウィルと話していると、いつも考えが一貫していることにときどき驚く。

判断が早くて、ほとんど即答していても、よく選び抜かれた答えが返ってくるから。


自分の中で芯が定まっていると、こんなふうにテキパキ物事が片付くんだなあって、わたしとの違いに感心する。少し面白くもある。


わたしはウィルに、心配をかけたい訳でも、嫉妬をしてほしい訳でもない。当然こちらの仕事を優先させてくれることも分かっている。

ウィルが配慮をしてくれたから、わたしもなるべく軽い口調で口を開いた。


「お客さまが異性の場合、扉を少し開けてもよいか、できるだけ尋ねるようにいたします」


いや、と首を振られた。


「昼間はきみの時間だ。仕事に口を挟む気はないよ」


……ただ、そうだな。


「夜は変わらず、私が迎えに行ってもいいかい」


ささやかな対策に思わず笑って、大きく頷く。


「もちろん嬉しいですわ。他に何か、ご希望はあるかしら」

「そうだな……もし急がないなら、依頼や相談を受けつけるのは、婚姻後にしてくれたら嬉しいなとは思う」


控えめな言い方だった。指輪をつけてほしいとは言わないところが好きだと思った。

ウィルの中で、結婚したらわたしが指輪をつけることも、指輪があれば節度を守る可能性が上がることも、このまま順当に婚姻することも前提だと分かって、泣きたい気分だった。


「わたし、訂正します」