真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「随分と声をかけられたのだから、疲れるのは当然だろうとも」

「そう、ですね。思ったよりお声がけが多くて、驚きと気疲れとが半々なのです。陛下のおかげもあって、自分の本が広まったことは知っていたのですけれど……」

「きみはここのところ忙しそうだったから、遠慮していたんだろう。私がわがままを言って、公爵家にいてもらうことも多かったから」


確かに、最近のわたしの居場所といえば、メルバーン公爵家か、わたしの執務室か、陛下のおそば。滅多なことでは近寄れない場所ばかり。

やることが多すぎて籠もっていて、なかなか外出していなかったから、気軽に声をかけていただく時間がなかった。


納得したものの、ひとつだけ訂正しておく。


「あら、わがままではなくて、必要なことでしたわ。婚約の準備をするというのに、婚約者のおうちに行かないなんて難しいと思います」


わたしは公爵家のみなさんにお会いできて嬉しかったわ。アレクサンドラさまにも、ほんとうによくしていただいていて嬉しかったし……。


「きみはまた、そういうことを言う」

「本心ですもの」

「皆も母も喜ぶよ。ありがとう」

「こちらこそ、あたたかく迎え入れてくださり、素敵な準備もしてくださって、ありがとう存じます。ウィルが素晴らしいのは、ウィルのご家族が素晴らしいからだって、こういうときに改めて感心いたしますわ」

「きみが選んでくれたんだから、私も私の家族も、悪いわけがないだろう」

「もう」


明らかな照れ隠しに笑う。ウィルは照れると、自分から相手に話題をずらす。