真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

あんまりたくさん声をかけてもらう中、ずっと立っているのが疲れてきた。


不慣れな服装で、お腹も腰も絞られ、靴は履き慣れない木型である。

どれも公爵家の威信をかけた素晴らしい出来で靴ずれなどはないのだけれど、とにかく慣れない格好であることは間違いがない。


普段はずっと座っているうえ、お仕着せだもの。お仕着せは動きやすい格好に決まっているので、お腹も背中も足も余裕があるのである。


思わずよろめくと、ウィルが肩を抱き寄せて転ばないようにしてくれた。


「大丈夫かい。少し休む?」

「ありがとう存じます。大丈夫ですわ。まだ陛下がいらしていないというのに、わたし一人が休むわけにはいかないもの」


座るわけにはいかない。でも、このまま礼儀正しく腕を組んでいるエスコートだけでは無理かもしれない。だいぶ足が限界である。


困ったわたしの背を支えたウィルの腕が、さりげなく腰に回った。


「よければ、少し寄りかかるといい」


肩と腰と腕を支えてもらえば、滅多なことでは倒れないだろう。


由ない必然なエスコートとしてはだいぶ距離が近いのだけれど、わたしとウィルなら婚約したんだから問題ない。

ウィルがその、こちらを大事に抱え込んでいる感じがするだけで。


……だから、「よければ」なんてつけたんだわ。はたから見たら、異性を遠ざけようと囲い込む婚約者に見えなくもない。


その実、不慣れな婚約者(わたし)が倒れないように支えてくれているのである。申し訳ないわ。


「いいに決まっています。大助かりですわ。ほんとうにありがとう存じます」

「それはなにより」


くすりと笑ったウィルから、甘やかな木の香りがする。