真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「わたし、彼とやりとりをする際に、あなたさまの文例を参考にいたしましたの。そうしたら、わたしの手紙が一番嬉しかったと、彼が婚約者候補の中からわたしを選んでくれまして……」

「あら、まあ! それは、おめでとうございます。きっとあなたさまのお人柄ゆえですわ。でも、わたくしがよいご縁のお力添えをできましたこと、たいへん嬉しく思います」


律儀に挨拶に来てくれるようなお嬢さんだもの。きっと、いろいろがこまやかで、そういうところがこの青年を射止めたに違いないわ。


「ありがとうございます。本日は薔薇のきみが生誕祭にいらっしゃるとお聞きして、どうしても一言お礼を申し上げたかったのです。個人的で急なお声がけを失礼いたしました」

「こちらこそ、嬉しいお声がけをいただき、ありがとう存じます。どうぞ末永くお幸せに」


何度も頭を下げ、幸せそうに離れていった少女を、微笑んで見送る。

それを皮切りに、たくさん、それはもうたくさん、数えきれないほど声をかけられた。


声をかけてくれる理由は、わたしの本であったり、仕事であったりさまざまだったけれど、決まって皆さんにこやかだった。


わたしの本といえば、書簡文集。書簡文集といえば、わたし。そして陛下。本の題名を言わずとも通じる。


今はまだわたしの本の冊数が少ないからだけれど、いつか、数ある中でもそうなればいい。