真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

高低差で水圧を高くすることによって、広場の中央で噴水がきらめいている。

慣れた城とはいえ、生誕祭ともなると、いつもより眩く飾り立てられていて、見慣れない場所のようだわ。


真鍮製の壁面棚には明々と蝋燭が灯され、シャンデリアが蝋燭の明かりを跳ね返しながら光っている。机上には食べきれないほどのご馳走が並んでいる。


中でも、繊細な白鳥のガラス容器に入れられた、黄桃のコンポートが一際目を引いた。


国鳥を(かたど)ることで、陛下のお好きなものだと分かりやすく示してある。それならばと、みな、一口はいただいているようだ。


「ご歓談中恐れ入ります、薔薇のきみでいらっしゃいますか」


呼びかけに振り向くと、お若いご令嬢が、婚約者らしき青年とともに立っていた。


「お声がけをありがとう存じます。書簡卿を賜っております、ジュディス・プリムローズと申します」

「やはり、あなたさまが書簡卿ですのね……!」


感極まったように目を潤ませた少女は、薔薇色に頬を上気させた。


お、お知り合いではないと思いたいわ。自分の記憶力に自信がないから、少し不安になる。


目を瞬いたわたしに、少女は深々と一礼して名を名乗り、幸せそうに微笑んだ。