真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「過去のきみの全てが、今のきみを助けてくれる。なにかあれば陛下がいらっしゃる。もちろん、私も手助けする」

「もう充分助けてくれていますわ。ありがとう存じます」


あなたは緊張にふらつくわたしをこうしてエスコートし、声をかけてくれた。

衣装を揃えてくれて、準備や用意をしてもらった。


それに、今日は珍しく壁の花にならないと分かっているので、気持ちに余裕がある。


これは家や将来のためによい殿方を見つけるための出席ではなく、仕事である。

やることが明確で、隣にはウィルがいる。おかげで気を回さなければいけないことがひとつ減るのも嬉しい。


強張るわたしに手本を見せるように、ウィルが優しく微笑んだ。


「今宵、うつくしい方をエスコートできますこと、光栄に存じます──ほんとうに」


社交辞令に添えられた指先の温もりに、精一杯微笑み返す。


「こちらこそ、今宵、あなたさまのお手をお借りできますこと、幸甚に存じます──ほんとうに」

「ありがとう。きみは今日、ほんとうに綺麗だ。だからどうか、堂々としていて」

「ええ」


陛下は王配殿下にエスコートされて、後々いらっしゃる予定になっている。今日は陛下の生誕祭だもの、主役は後からいらっしゃるものよ。


それまではまだ少し余裕がある。


「ジュディス、なにか飲むかい」

「軽いものをいただきたいわ」


給仕を捕まえて、二人分飲み物を頼んだウィルが、差し出された盆から一つ渡してくれる。


淡く甘いそれを傾けながら、豪奢なシャンデリアの下を、二人でゆっくり歩いた。