真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

甘くスパイシーな香りとともに会場に向かうと、ざわつきが広まった。


周囲を見渡したウィルが、ほうと小さく息を吐く。


「よかった、私はきみの隣に立つに足りたらしい」

「いえ、わたしは叙爵こそされましたが、伝統ある公爵家と比べれば……」

「きみは身分差を心配するが、書簡卿にはむしろ、公爵家の方が足りないよ」

「いえ……」


宴に出席するのは初めてではない。でも、国を挙げての大きな宴、ましてや隣に立つひとやこの衣装にふさわしくなければと思うと、胸が早鐘を打つ。


「ジュディス。わが国全土を見渡しても、きみ以外に書簡卿はいない」


ウィルは穏やかだった。


そこで自分が隣にいることではなく、わたしが書簡卿であること、揺るがない立場だということを枕にして慰めようとしてくれるところが、このひとの高位貴族らしさだわ。


「初めての爵位ということは、前例のない偉業を成したということだ」

「ええ。そうお認めいただいたのは確かです」

「きみ以外いないのだから、一挙手一投足、きみが前例だよ。失敗しても親しみがあると受け取られ、完璧なら流石前例のないお方よと言われるだろう」


だから大丈夫、とこちらを見つめる瞳は、ヘイゼル。


「人々は陛下に倣い、きみに敬意を払う。きみは、その勅許の色を身にまとい、ただ微笑めばいい」


大丈夫だよ、ジュディス。