真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

ウィルが好きな香りの下をくぐり、鏡で最終確認をして完成。婚約者として、少しはふさわしくなっているといいのだけれど。


一階で待つウィルのもとへ、階段を降りて向かう。


背筋の伸びるうつくしい装い。深い海のような青い色の裾が、歩くたびにふわりと揺れた。


「ウィル」


階段の途中で見つけた婚約者は、椅子に腰掛けて本を読むだけで、おそろしく様になっている。おかしい。まったく、どういうことなの。


手元の分厚い本は、法律書かなにかだろうか。閉じた本から顔を上げた拍子に目が合うと、ウィルが穏やかに微笑んだ。


「似合っている」


溜め息のような、静かな褒め言葉がこぼれ落ちる。


「きみは、会うたびに優雅になるな」

「……わたし、あなたの褒め言葉が好きです。ありがとう存じます」


全然意識せずにこぼしていたらしく、それはよかった、と語尾に少しの疑問符がついた返事が来て、思わず笑ってしまう。


自然にこぼれた言葉がこれだなんて、本心だと言われたみたいだわ。


「お気に召しましたか?」

「もちろん。綺麗だ」


ウィルはこちらの手を取って、満足気に笑った。