真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

ウィルの読み通り、婚約の挨拶の知らせを受けたアレクサンドラさまは、いまにも踊り出さんばかりに喜び、公爵家のみなさまも笑顔で迎えてくださった。


「ジュディスさん、愚息をもらってくれてありがとう。あなたが家族になってくれると思うと嬉しいわ」

「こちらこそ、あたたかいお言葉をありがとう存じます。至らぬところも多いかと思いますが、精一杯努めますので、これからどうぞよろしくお願いいたします」


陛下の生誕祭についても話をする。


「あなたはもともと素敵だけれど、腕によりをかけて、公爵家の威信にかけてあなたの準備をするわ」


勅許の話を受けてか、ウィルよりアレクサンドラさまの方がやる気に満ちていて、わたしの状況と意見を踏まえながら手早く諸々を進めてくださった。


公爵家お抱えの仕立て屋で採寸し、ダンスの練習や所作の確認を重ねる間、全然分からないわたしは、とにもかくにも指示されたことをこなして、なんとかかんとか、諸々についていくだけで精一杯。


毎日が目まぐるしく、決して楽ではなかったけれど、このたいへんなスケジュールはわたしのため。

次期公爵の婚約者になったからではなく、わたしを慮ってのこと。


たいへんなのは、公爵家のみなさまも同じ。お優しい方ばかりで、ほんとうにありがたい限りだわ。