真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「いいや」


何度もキスが降った。上書きしたい、とこちらを見つめる目が、触れる手が、熱をはらんでいる。


「きみは、こういうことに不慣れなんだな」

「あのひとはわたしにとって、望ましい相手ではありませんでした。いつのまにか決まっていて。最低限のことしか、しませんでしたので……」


愛を乞うひとではなかった。手篭めにされているとか、乱暴されているとか言う方がふさわしかった。


だから、愛を乞われ、大事なもののように扱われると、どうしたらいいか分からなくなる。


ウィルのやり方は、上書きというより、初めてのことを教え込まれているみたいなんだもの。


「ジュディス」


ずるい。呼びかけひとつでこちらを陥落させる。


「執務室では、嫌です。部屋に……」


尻すぼみなお誘いに「嬉しい」と笑って、ウィルが繋いだ手にキスを落とした。このひとはよく触れるひとだったのだと、分かって嬉しい。


鍵を開け、薔薇の札をそっと外す。


薄暗がりの隣で、嗅ぎ慣れた香りが、一際甘くスパイシーに香った。