真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

「茶色ではもったいないよ」

「あら、ウィリアムさまなら、わたしに似合う色を選んでくださるでしょう?」


靴はもちろん茶色にしましょうと見上げると、ウィリアムさまが、ひどく眩しそうな顔をした。


「……ジュディス嬢」


重なった指先に、短いキスが降る。甘くスパイシーな香りとともに、うつくしいヘイゼルが、ゆらめく熱を湛えてこちらを見据えた。


「ジュディス嬢。もう一度呼んでくれ」

「ウィリアムさま。わたし、あなたがくださるドレスが着たいわ」


それから、どうぞジュディスと呼んでくださいな。


「……ジュディス」

「ええ」

「私もウィリアムと呼んでほしい」


優しく甘やかな願いだった。


「ウィリアム、さま」


けれど、言おうとして、うまく言えなかった。


「……嫌かな」

「いいえ」


嫌ではない。それは違う。はっきり否定して、ゆっくり口を開く。


「恥を忍んで申し上げますから、どうかお聞きくださいね」

「ああ」

「かつての夫は、父が選びました。あのひとは節制のひと、自分にも他人にも厳しいひとです。名を、ウィリアムと申します」


ウィリアムさまは、「そうだね」と短く頷いた。一拍置いて、「そうだったな」とため息混じりに続いた。


「あのひとを、ウィリアムと呼んでいて……あなたがウィリアムというお名前なのは、素敵なことだわ。でも」


言葉に詰まったこちらの続きを、ウィリアムさまが静かに引き取った。