女王の相談に乗るだけかと思っていたら、侍女に手を焼かれるのも意外なことだった。


髪だとか肌だとかを磨かれたり、きれいな服を着せようとしてくれたり。

こまめな部屋の掃除を試みてくれたり、蝋燭や飲み物の減り具合を確認してくれたり。


およそただの文官にはふさわしくない甲斐甲斐しさなのである。


女王が多忙なあまり、毎夜書簡を手伝う以外は滅多に呼ばれないので、当たり前なのだけれど、わたしは大抵することがない。

かと言って他の人の仕事を奪うわけにもいかず、おとなしく読書や執筆にふけっている。


それがあまりにも暇そうに見えるらしい。

わたしが時間を持て余していることに気づいた侍女たちが、あれやこれやと気を紛らわしてくれるようになった。


女王の御心が穏やかであることは、重大な優先事項である。


女王のお気に入りなうえ、実力は確からしいのだから、退屈されて嫌われてはかなわないということのようだった。


……本の虫でいられるから、実際のところ、わたしはなんにも退屈していないのだけれど。


ただ、流行りや女心を取り入れるのに、一人でいるよりは教えてもらえた方がやりやすいので、助かっている一面もある。


「わたしはこのままで大丈夫ですよ」「いいえ、わたしたちが大丈夫ではないのです」とやりとりをしつつ、週に何度か、されるがままになるのだった。


手先の器用な侍女が、あるとき薔薇を模したシニヨンに髪を結んでくれた。

それを女王が大層気に入り、何度も何度も褒めてくれたものだから、侍女は腕を買われて昇格し、わたしは結び方を習って毎日薔薇のシニヨンに結うようになった。


髪を幾束かに分けてくるくる巻きつけていくだけだから、時間はかかるけれど、難しくはない。


薔薇の髪、真珠の首飾りと耳飾り、薔薇のブローチ。


薔薇と真珠がわたしの代名詞になった。