「心菜、俺もその計画に入れて貰えないか?」

心菜は目を瞬かせて俺を見つめる事、数秒…。

「でも…蓮さんは日本で活動しなきゃいけないでしょ?コンサートツアーだって今年やるんだよね?TVだって出るだろうし…。」

俺は心菜の話しを聞き、思い付いた事を口にする。

「俺の仕事の半分は、作詞作曲でタブレットさえあれば充分出来る。TVのオファーがあればその都度帰れば良い。」

海外を拠点としてやっているアーティストは結構いる。出来ない事は無いだろう。

それに、その方が自由に暮らせるだろうし、心菜だって好奇な目に晒されなくて済むんじゃないかと思案する。

事務所を独立した意味がここにあると思う。

「でも…事務所の人が大変でしょ⁉︎」

「まぁ、やり取りは少し困難になるかもしれないが、このLAに心菜を1人残してはいけない。帰る時は必ず一緒だ。
10月が生まれ月だろ?」

心菜は既にポカンとしているから、多分半分も頭に入って無いんだろなと思うが…。

冷めて食べやすくなった卵粥を、再び心菜の口に運ぶ。心菜は考え事をしてるようで、抵抗無く口が開くから、俺は雛に餌付けをしているようで可愛いな、と密かに思いながら黙々と食べさせ続ける。

お腹が満たされると悪阻も押さえられるようだ。お粥を完食してくれた。

「…側にいてくれたら凄く嬉しいけど、蓮さんを独り占めしてるようでファンの方に心苦しいな…。」

ポツリと心菜が呟く。

「良いんじゃないか?俺だって心菜を独り占めしたい。」

心菜の周りにはいつだってライバル達がいる。隙あらばと狙っているから、ファンなんかよりよっぽどタチが悪い。

心菜はそんな事には全く気付いていないから、首を傾げて不思議そうに、

「…もう、独り占めしてるよ?」
と言ってくる。

何も分かってない。と、俺は彼女の肩を抱き寄せ頬にキスをする。

それだけでビクッと身体を震わすから、会えなかった4か月でどれだけ距離が空いてしまったんだろうかと俺は不安になる。

唇にそっと軽いキスをする。

体調が悪いだろう彼女を気遣い様子を伺う。

真っ赤になって俯いてしまうから物足りなさを感じるが、これ以上はと自分を制し心菜からそっと離れる。