(しかしここでめげている場合ではない。あと二日半で結婚休暇だって終わってしまうんだぞ!)

 後がない私は、必死に気合いを入れる。

 こうなったらサプライズプレゼント攻撃だ。
 女性はサプライズが好きだと言う情報は、『溺愛シリーズ』から既に入手済みだ!

「ステファニー」
「……はい」
「私は午後、出かけようと思う。君も好きに過ごしてくれ」
「……分かりました。どちらへお出掛けされるのですか」

 聞かれると思わなかった!

「いやっ!? ええと、そんな、大した用事ではないのだが」
「結婚休暇中に妻を置いて大したことのない用事に向かわれるのですか」
「いやいや!? いやそうだ、そうだな、結構大事な用事だ。うん、重要なプロジェクトのために必要なことなのだ」
「重要な……?」
「うむ。今君に言うことはできないが、侯爵家の存亡の危機に関わる内容なのだ」
「存亡!?」

 跡取り新婚夫婦の離婚の危機だから、存亡の危機と言っても間違いではないだろう。

 私は、自分には兄弟姉妹が5人もいておそらく跡取りには困らないだろうことを棚上げして、内心頷く。

 それから、ステファニーの追求をモゴモゴ言いながらかわし、彼女に胡乱な目で見られながらなんとか出かけるてはずを整えた。

(さて、何を買いに行くべきか……)

 とはいえ、実はもう何を贈るのかは思いついているのだ。

(ステファニーもきっと悦ぶぞ!)

 私はウキウキと心を躍らせながら、護衛を引き連れ、街に繰り出したのである。


 こっそりステファニーが跡をつけてくるとは、つゆほども思わずに。