「ミッチー、わたくし綺麗かしら!?」
「その呼び名をやめろ!」
「いいから、ミッチー!」
「分かったよ、綺麗だ! これでいいのか!」

 適当に叫んだだけだったけれど、彼女はいつもと違ってポカンとした後、泣きそうな顔で微笑んでいた。
 ……確かに、あの顔は正直、その……可愛かったのは、否定しない。

 けれども結局その後、彼女は生来の傲慢な調子を取り戻し、夜には狼のように私を襲ってきた。

「愛してるわ、ミッチー!」
「やめろ、暑苦しい。ちょっ、押し倒すな!」
「ミッチー。そろそろ素直になって、わたくしのこと愛してるって言っていいのよ?」

 ガウンを脱ぎ、私を押し倒しながら見下ろしてくる彼女は、女神のようだった。

 サラサラの金髪は絹糸のようで、その琥珀色の瞳にゆらりと見つめられて、私は体が熱くなるのを感じる。

 いや、ちがう。
 そんな、私は別に、ステフのことなんてなんとも思っていない。
 こんな暴君にときめいていないし、恋だってしていない。
 この結婚は元々、政略的なものだしな!


「だから、前から言ってるだろうが! 私はお前を愛することはない。私に愛を期待しても無駄だ!」


 私は自分の中の乱れた気持ちを落ち着けるべく、いつもどおりの憎まれ口をたたく。

 その後しばらくは、ステファニーもいつもどおりの調子だった。


 けれども、しばらくすると、急にステファニーが泣き出してしまったのだ。