自分の家族すら妬ましく感じる自分に、私はようやく、「あれ……、もしかして私は彼女のことが、好き……?」と段々気がつき始めていた。

 学生時代に彼女の猛アタックに恐れ慄いた私は「普通の恋がしたい」とぼやいていたが、なんと私はとっくにステファニーに恋をしていたのだ。いつも彼女が横にいるから気がついていなかっただけだった。彼女を泣かせて、隣に居なくなってようやく気がつくなんて、私はなんて愚かなのだろうか。
 愛についてはまだ分からないが、片恋の辛さはしっかり思い知ることになってしまった……しかも相手が妻で既に離婚の危機という、最悪な状況までついてきた……。


 私は昼食を摂り終えると、侍女を呼んで食器を下げさせる。

 そうして、ソファに座り込むと、朝から持ち込んでいたあるものをそっと取り出した。



 昨晩、ステファニーの使っていた枕だ。



 彼女はよく、私の枕を盗んでは勝手に匂いを嗅いでいた。
 変態……だった。
 私は彼女が私のお気に入りのメーカーの枕を盗んでいくのが本当に嫌だったな……。

 私は、マクマホン侯爵家本邸客間の彼女の枕を見ながら、そんな昔の思い出にふけり。



 気がついたら自室に彼女の枕を持ち帰っていたのだ。