「どうですか、マクマホン侯爵。ステファニーを実家に連れ戻すことは簡単だが、私どもの家はここから遠い。それでは二人は話し合いをすることもままならないでしょう。よければ暫く娘をここで預かってくれませんか」
「ス、スマイル侯爵。それは、私達は構いませんが、娘さんからすると義理の両親の家で心安らがないのでは?」
「なに、あの子はこの三年、申し訳なくも毎日お宅の王都別邸に突撃していました。家族ぐるみの仲です、今更でしょう。あの子も、本邸での滞在を許してもらえるなら、マクマホン侯爵領に残ると言っています」

「お姉様……!」
「私、ステファニー姉様を守るわ! 兄様なんか撃退してやるんだから!」

 ステファニーは夫婦の話し合いのために残るのに、私は撃退される予定なのか。

「まあ、それにしてもマイケル君」
「はい」
「君の気持ちも分からないではないが、時には素直になることも必要だよ」
「……はい、ありがとうございます」

 こうして、スマイル侯爵の温情により、24時間を経過することなく解消されそうだった私達の婚姻は、なんとか首の皮一枚で繋がることとなった。

 そして、私はステファニーに会いに、日々、本邸に通うこととなったのである。


「その前に、お兄様」


 ぎくりとして振り返ると、そこにいるのはもちろん、母と二人の妹。

「ちょっとお時間いいかしら?」
「姉様、聞く必要なんてないわ。連行しましょう」
「情けない、情けない……」

 こうして私は、ツノが生えたかと錯覚するくらい怒り心頭の女性陣に、別室に拉致されたのだった。


 その間、我が家の男性陣はソファに固まって青ざめた顔でこちらを見ていた。